井出 匠

歴史を通して
現代を問い直す

  • 井出 匠
  • IDE Takumi
  • 教育学部 准教授(歴史学)

Profile

1976年、山口県生まれ。2005年3月、早稲田大学文学研究科西洋史学専修 修士課程 修了。2014年3月、コメニウス大学(ブラチスラヴァ) スロヴァキア史学科 博士課程修了。日本学術振興会特別研究員(DC,PD)、外務省在スロヴァキア大使館専門調査員、日本国内の大学の非常勤講師、立教大学特任准教授などを経て、2020年4月より福井大学教育学部准教授となる。
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スロヴァキア、翻弄された国に学ぶ

 古い歴史のある中央ヨーロッパ東部にあり、1993年に独立したばかりのスロヴァキア共和国。スロヴァキア人は、長らくハプスブルク帝国(オーストリア=ハンガリー二重帝国)の領域内にありながら、言語を共有する者としての集団が自治の獲得を目指してきた歴史があります。古代からほぼ同じ地域に存続する日本とは対照的です。私は19世紀後半から20世紀初頭にかけて、スロヴァキア人が政治主体としての “ネイション(国民/民族)”という意識をどのように形成していったか、それをヨーロッパの近現代史の中でどう位置付けるかを研究しています。
 研究の一環として、ハプスブルク帝国時代の19世紀に発展したスロヴァキアのナショナリズム運動で、知識人が一般民衆をどのように鼓舞したか文献を探します。しかし、読み書きできる人が限られていた時代とあって、史料が少なく調査は大変です。そんな中、当時の新聞は貴重です。知識人が書いている論説よりも、地方で生きている一般人の投稿の方が当時の世相を赤裸々に伝えてくれるのは面白いですね。例えば、役人などに反発する「民衆」としての意識が、「スロヴァキア人」意識と結びついている点などです。

1905年当時のスロヴァキア語の新聞

次の世代に伝えたいこと

 歴史学の役目は、歴史を通じて社会にある先入観に気付き、現在の価値観の意味を問い直させてくれることです。私の講義では、人権、差別、ジェンダーの視点から歴史的に社会を学ぶことで、人権や主権を先人が勝ち取ってきた努力を強調します。現代の自分たちの社会を見つめ直すきっかけにしてほしい。人権や参政権など、今では当たり前とされていることは、その時代、その場所に生きてきた人が何百年もかけて獲得し、社会を変化させてきた結果です。努力して獲得したことは維持の努力をしないと失ってしまうのです。教員を目指す学生には、今の社会がそのように形成されてきたことを将来、教える子どもたちにも伝えてほしいと思っています。

It's My Favorite!

ジャズセッションでウッドベースを弾くことです。 一緒にセッションしてくれる方は是非お声がけください!