スギ花粉症に困っている
子どもたちのために
- 坂下 雅文
- SAKASHITA Masafumi
- 医学部 講師(耳鼻咽喉科学)
Profile
1974年、福井県生まれ。2010年、福井大学大学院医学系研究科博士課程修了。同年、福井大学医学部助教。2013年、米国ノースウェスタン大学留学。2018年、福井大学医学部附属病院医学研究支援センター講師、耳鼻咽喉科併任。
教室の苦境
「一度、教室に来てスギ花粉症に苦しむ児童の状況を見てほしい」。ある小学校の先生の訴えで、学校を訪ねたことがあります。大きなゴーグルをかけて机に向かう子、寝不足から登校すらできない児童もいるとのことでした。来院して治療を受けにくる児童はきっと一握り。たいへんな状況になっていると痛感し、目の前に来る患者以外のことも考える専門家であらねばと思いました。
スギ花粉症は、鼻で吸い込んだ花粉の抗原物質に免疫が過度に反応して起こります。くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状にとどまらず、睡眠障害、思考力低下、憂鬱などにもつながり日常生活に困難が出てきます。
コロナ禍 ピンチをチャンスに
2019年に本学が事務局となり全国の約2万人を対象にスギ花粉症の調査を行いました。年代ごとに分析すると、4歳までは4%であった有病率が、通学などで外出する機会が増える5~9歳では約30%に跳ね上がっていました。この調査後に、外出時に誰もがマスクを着用するコロナ禍の習慣が定着。「このマスク生活では、新たに発症する人が減るに違いない。マスクの効果を実証できるチャンス」とひらめいたのです。
福井県内小学校の協力の下、全県の小学生を対象にスギ花粉症の調査を実施。その結果、コロナ禍前の5年間で新たにスギ花粉症を発症した割合が約3.1%だったのに対し、コロナ禍の最中の21年では約1.35%と半減していました。登下校の際にマスクをすることによりスギ花粉症の発症を防ぐことを実証した初めての調査です。なーんだ、と思うかもしれませんが、特別な期間にできた特別な調査でした。
現在、福井県や県内ソフトウエア開発企業と産学官連携をして、小学生が楽しんでマスク習慣を身につけることのできるアプリを開発しています。福井県モデルをつくり、全国に発信して子供たちに暮らしやすい環境を整えたいと思います。若い人のアイデアも募集していますので、学部の枠を超えていっしょにやりませんか!
家の花壇の手入れなどで子どもと一緒に植物の生育について学び、通勤中はスギなどの森林樹木の生育状況、移り変わりを記録。年中、スギ花粉症のことを考えています!笑