廣野 靖夫

がんとの戦い最前線

  • 廣野 靖夫
  • HIRONO Yasuo
  • 医学部附属病院 がん診療推進センター長 (消化器外科学)

Profile

1965年、富山県生まれ。1990年、金沢大学医学部卒業。1996年、金沢大学医学研究科外科系博士課程修了。2000年、福井医科大学(現福井大学医学部)医学部第1外科助手。2015年、同講師。2019年、福井大学医学部附属病院がん診療推進センター長兼腫瘍病態治療学講座准教授。2021年から現職。
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やっかいな腹膜播種(ふくまくはしゅ)

 手術で病巣をすべて取り去れば、がんは完治できるー、そんな思いから外科医になりました。しかし、実際は手術だけでは治せないがんが多いのです。
 胃がんが進行して「腹膜播種」という状態になることがあります。人のお腹の中は「腹腔」と言われ、全体は「腹膜」という薄い膜で覆われています。その中に胃など消化器官があります。消化器官にできたがんが大きくなって腹腔内にあふれ出し、腹膜のあちこちに種を播いたように散らばってくっついた姿。手術だけでは治せない進行がんの一つです。
 私はこの腹膜播種を消失させる臨床研究を行っています。抗がん剤を腹腔に直接入れる「腹腔内化学療法」で、抗がん剤の組み合わせ、投与のスケジュールなどを様々に試み、治療効果を検証しています。これまでの研究で、播種がある胃がん患者の1年生存率を以前の50%から、70%にまで改善。さらにより有効な抗がん剤を使うことができた患者さんの場合、90%に向上させています。
 2歳のお子さんがいた女性の患者さんのケース。当初、お子さんの幼稚園入園さえも見ることはできないだろうとご夫婦で嘆き悲しまれていました。この療法を試みた結果、10年以上経過した現在も健在。ご家族が幸せに暮らしているのを見ると、この仕事を選んで良かったとつくづく思います。

 

チーム医療で患者さんとその家族を支援する

 近年のがん治療では診断時からケアサポートが欠かせません。私がセンター長を務めるがん診療推進センターは、院内全体のがん治療をサポートし、私自身は緩和ケアチームや栄養サポートチームを率いています。また外科医として、他の病院では手術を諦めてしまうような症例でも手術ができるようにすることに挑戦しています。
福井大学ががん患者さんやその家族にとって“最後の砦” となるようにこれからも活動していきます。

It's My Favorite!

念願のセラーを手に入れました。子どもたちと将来一緒にお酒を飲むのが楽しみです。