『型にはまらない』加工技術
- 大学院工学研究科 機械工学専攻(塑性加工、FEMシミュレーション)
- 大津 雅亮 先生
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コンパクト、省エネの裏側
皆さんが使っている携帯電話やデジタルカメラなどは、5年前のものと比べてみると、ずいぶんと小さくなって、様変わりしています。こうしたデジタ ル製品の小型化が進むと、中の部品はどのくらいの大きさになっているのか、想像ができますか?
最近のスマートフォンなどの電子機器には欠かせない次世代MEMS:メムス(微小電子機械システムMicroElectro Mechanical Systems)と呼ばれるシステムは、小さいものだと0.5㎜くらいの大きさで、高精度、省エネルギー性に優れています。情報通信、医療、自動車産業等で広く応用されており、身近なところでは、距離情報や速度を読み取る加速度センサや赤外線などのセンサ、血圧や血管を計測する流体?気体制御などがあります。
このような電子部品を生産するには、極めて緻密に出来た金型に材料を流して部品を作りますが、作りたい部品の小型化が進むとその部品をつくる金型や工具も小さくなり、両方の生産が難しくなってきます。
小さくて薄いものを正確に曲げる難しさ
私が行っている研究は、レーザや火花放電を使って0.1㎜ぐらいのシリコンやガラスなどを変形させる「ダイフリーマイクロ?ナノフォーミング『(材 料の)金型が不要な』」加工法の開発です。文字通り、金型を使わずに、レーザで金属板を変形させる加工法は以前にもありましたが、誰もがシリコンを曲げることはしていませんでした。それは経験的に金属は曲げられる材料だけどもシリコンやガラスは割れやすいので曲げられないという固定概念にとらわれていたからだと思います。私は
“今までにない”を生み出す
日本は戦後の高度成長期に欧米の先進技術を取り入れて真似をすることによって発展し、科学技術を世界的に牽引する立場にまで成長しました。ところが、現代は今までに無かったことを考えなければなりませんから、既成概念にとらわれないよう、「型にはまらない」ことが必要になってきます。
私は「コロンブスの卵」がとても好きです。「コロンブスの卵」とは、誰にでもできることを最初にすることが難しいということで、誰も直立させられなかったゆで卵をコロンブスが机にぶつけてへこませて簡単に立てて見せた逸話からきています。このように発想を転換することで、聞いてしまえば大したことがないことでも、多くの人が今まで気がつかなかったことはたくさんあります。難しいことを考えて、難しいことをやるのは、ごく一部の人にしかできませんが、「型にはまらない」発想から「コロンブスの卵」を行うことは誰にでもできます。皆さんも「型にはまらない」ことをやって大発見?大発明をしてください。
今ハマっていること★
自宅近くの用水路にはザリガニがたくさんいて、子供の夏休みのラジオ体操の後に毎日子どもと一緒にザリガニ釣りをしていました。自宅には釣った ザリガニの他に金魚やミドリガメなど水生動物をいっぱい飼育しています。