工学研究科生物応用化学専攻1年
白石智美
平成19年度生物工学会にて,工学研究科 生物応用化学専攻1年の白石智美さんが発表した演題「磁性ビーズを組み合わせた有害微生物の電気科学的高感度DNA検出システム」がバイオテクノロジーのフロンティアを象徴するトピックスとして選出され,要旨が学会誌に掲載されました
今回、私は広島大学で行われた2007年度第59回日本生物工学会大会に参加し、自分の研究成果を発表しました。そして、それに先立ってその演題が大会トピックの一つに選ばれました。これは日本生物工学会広島大会開催に先立ち、広報活動の一環として日本生物工学会および大会実行委員会が科学関係報道記者会見を開催し、大会のトピックスを広く社会に紹介するというものです。私の演題は酵素工学に関する演題110件の中からトピックスとして3題の中のひとつに選ばれ、学会誌にも講演要旨が掲載されました。
私が発表した講演タイトルは『磁性ビーズを組み合わせた有害微生物の電気化学的高感度DNA検出システム』です。私達の研究室では、耐熱性酵素を修飾したプローブを用いたサンドイッチハイブリダイゼーションによる迅速かつ高感度な電気化学的DNAセンシング法を確立していますが、食品試料などからDNAを調製するには煩雑な前処理が必要です。そこで、菌体捕獲用ビーズと磁性ビーズを組み合わせた食肉中の有害微生物の捕集および分離?濃縮法について検討しました。ここで用いた細菌捕集用ビーズは菌体表層の多糖類に対して親和性を有し、また磁性粒子と菌体捕集粒子が別々であるという特徴があります。今回はこの菌体捕集ビーズによる試料前処理とPCR法を電気化学的DNAセンシングシステムと組み合わせることでサルモネラ属菌、レジオネラ属菌のより高感度な検出法を確立した、というのが主な内容です。培養法や免疫学的方法などの従来の有害微生物検出法では結果が出るまでに長時間を要します。一方、PCR法は特異性が高いのですが、増幅したDNAのバンド検出に発癌性のエチジウムブロマイドを用いるため、実際に食品製造現場などでの衛生管理のために利用することは適していませんでした。本法は高感度であり安全かつ迅速な検出法を実現しています。今回用いた菌体捕獲ビーズは非特異的な吸着によって集菌して試料を濃縮するので、プローブの設計によって種々の微生物の検出が可能となり、同時に多種の有害微生物の検出できるシステムへの展開が期待されます。本方法は現場に即した微生物検出法であり、食品や入浴施設などで安心?安全を提供することができます。
今回私の発表内容が大会トピック集のひとつに選ばれたことは大変光栄で、自分の研究成果が評価されたという実感が沸きました。また、社会的に意味のある研究ができたことを嬉しく思うと同時に、熱心にご指導頂いた先生に大変感謝しています。この学会は私にとって初めての学会参加でしたので、全てが新鮮で緊張の連続でした。発表は最終日の朝一番ということもあって学会の開催期間はあまり眠れず、発表が終わった時は疲れと眠気が一気に襲ってきて力が抜けました。自分の発表では緊張のあまり足も震えて言葉に詰まったり、セリフが飛んだりしてとても満足のいくものではなかったので、もっと練習して次に挑もうと反省しています。学会は参加者全員が自分の研究に誇りを持ち、互いに刺激し高め合っているという事をひしひしと感じ、私も他の研究者達に負けないようにもっと精進しようという意欲が益々増しました。これからも、日々向上心を持って研究に臨みたいと思います。